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【イベントレポート】ミドルシニアがデジタル人材になるための教育の在り方を考える

2021年1月30日(土)10~11時にオンライン開催された日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社代表取締役社長 井上 裕美様とHappiness insight LLC.の津田代表によるに対談イベント「ミドルシニアがデジタル人材になるための教育の在り方を考える」。
土曜日の朝にも関わらず、HR領域業務に携わる方がおよそ100名参加され、みなさまのミドルシニア世代の活用やDXへの関心の高さがうかがえました。DX推進の言葉の定義や考え方、ミドルシニアへのアプローチについて、視点のヒントをイベントレポートとしてお届けします。

[登壇者]

井上 裕美氏
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社代表取締役社長

慶応義塾大学理工学部卒。2003年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。
官公庁業界を中心としたお客様のコンサルティング、システム開発、
保守運用に携わる。 官公庁業界のリーダーを経て、
2020年7月より日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員および
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社代表取締役社長に就任。
専門領域は基幹系および DX に関わるシステム全般、プロジェクトマネジメント。
若手技術者や女性技術者コミュニティなど、様々なコミュニティ活動を実施し、
プライベートでは二児の母。

LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/hiromi-inoue/

 

津田 恵子氏
Happiness insight LLC 代表

早稲田大学法学部卒。株式会社リクルートスタッフィングにて人事採用業務2年半後、
伊藤忠人事総務サービス株式会社にてグループ会社向け採用OSを5 年。
伊藤忠商事向け研修企画・運営に 7 年従事。
転職だけでなく、妊娠→産休・育休、保活をすべて経験。
日本の働く人を応援し、共に成長すべく、
2019年8月よりフリーランスとして活動開始。
同年9月 Happiness insight LLC 設立。
現在リカレント教育普及を通して、人々の幸せな働き方を支援。三児の母。

LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/keiko-tsuda-990290190/
Twitter:https://twitter.com/marupyon2
FB:https://www.facebook.com/keiko.tsuda.

 

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?


井上 裕美氏(以下、敬称略):昨今いろいろなところで、叫ばれているDX。
なぜD“X”なのかというと、トランスフォーメーションに、「何かを乗り越える」「交わる」という意味があるためです。しかし、DXに対して思い浮かべるイメージは、人によって違いがあります。
すこし整理してお伝えすると、まず、ハンコ文化や紙での回覧などのアナログ文化の振る舞いを、デジタルに変換することを、デジタイゼーションと言います。デジタル情報への変換です。
デジタイゼーション後に、プロセスの自動化やプロセスそのものを変革し、今までにない新しい価値創造が体験できることを、デジタライゼーションと言います。

このデジタライゼーションを、どんどん繰り返して、一つの企業の中だけではなく、企業や業界の枠を超えて繋がり合う、またそれによってデータが連携し合う、人と人が繋がり合う。付加価値の創造ができ、社会がより豊かになっていく……これらを繰り返し実施することで組織、経営そのものも変革をしていくのが、DXだと認識しています。
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社では、企業の状況、進捗具合、ありたい姿を一緒に引き出し合いながら、デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXとトータルでご支援しています。

 

目的を見失わないで欲しい、DXの推進の在り方~2つのアプローチ~


井上:コロナ前より、経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」をはじめDXの必要性が唱えられてきました。そして、コロナでさらにDXの必要性が加速しました。単にデジタル化するだけでなく、戦略的に「どんな風にデジタルを使っていくか」「ビジネスプロセスをどう変革するか」「データを活用して新しいサイクルが生まれるのか」という観点で、デジタライゼーションをスピーディに進めてきたのだと読み解けます。これからさらに進むべきところは、業界の枠を超えていくことです。

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社は、ITのテクノロジー技術者の立場なので、いわゆる技術として、何かを実現することが可能です。しかしながら、真のデジタル変革は、お客様からの要件をいただいて、我々の中だけで作り上げるというよりは、お客様との信頼関係のもと、お客様と一緒に作り上げていく共創の在り方が適していると思います。

DXを成しえた先に「何が創造され、体験したいことなのか」を、引き出し合いながら一緒に作り上げいく必要があります。こうした引き出し合う文化は、一つの企業の中ではなかなか実現できません。なので、企業の枠を超えて繋がり合う必要性があるのです。お客様とたとえば我々と一緒に共に作り上げていくことが、このデジタル変革では求められると思います。

津田 恵子氏(以下、敬称略):私は、組織風土開発や組織のカルチャー改革のアプローチでDX推進できたらと思っています。
教育研修の立場からDXをとらえると、本質は組織開発だと思います。変革をするには、どういう組織体制でやるかがすべて。人事側は、DXと言われたときに、着想が組織にいかないことがあります。たとえば、レガシー企業が「サイボウズ社になろう」としたときに、組織風土の問題にぶつかると思うのです。しかしながら、DXで「何を成し遂げたいのか」が置き去りになり、デジタルのスキルそのものに目が行ってしまうことが多いです。組織開発から始まるDXがあっていいのではないでしょうか。

井上:日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社は、ダイバーシティ&インクルージョンの会社です。性別、国籍、年齢、経験年数というよりは、「何を成し得たいか」「どういうそのスキルを身につけているか」など、やりたいという想いや挑戦を応援する文化が、根強くあります。キャリアについてもコミュニティ内で、良かった事例、考えや悩みを共有します。ワークとライフのどちらかをシーソーのようにマイナスする「バランス」ではなく、キャリアを「インテグレーション」するように考えています。


津田:ダイバーシティのある会社は、自律的なキャリア形成が社員のベースのマインドとしてあるのでしょうね。日本の伝統的な企業においては、ミドルシニアを中心に自律的なキャリアが築けない状況がまだ多いように思います。



ミドルシニアをデジタル人材にするためには~スキルの見極めと可視化~


津田:多くの大手企業はシニアのセカンドキャリアをデザインすべきフェーズにあるのですが、55歳の役職定年などを見据え「自分はこのくらい」とキャリアの天井を覆ってしまい、がんばり切れていない人が多いのではないでしょうか。

しかし、彼らも会社に入った時には、すごく理想に燃えていたはずです。ただチャンスがなかったり、ポストがあいてなかったり、不活性な状態になっているだけだと思うのです。HRの施策については、性善説でやるべきと思っています。
ミドルシニアに新規事業開発をやってもらい、収益を自分たちで上げていくことができれば、個人にとっても企業にとってもハッピーな形ですよね。そして、新規事業やイノベーションを興す際に、デジタルは切っても切れません。ミドルシニアが新規事業を考えるうえで、デジタルスキルを伸ばしていければいいのではないかと思います。

井上:デジタル変革は、すべてを刷新するというというよりも、残し守るべきものをちゃんと見定める必要があると思うのです。安定的に運用できる実績があってこそ、初めて変革できます。スキルについても同様で、新しいスキルだけが良いということではないので、既存のスキルを大事にしつつ、「プラスアルファでどういうスキルをつけていくか」を考える必要があります。加えて、スキルをもっていることを隠すのではなく、「誰がどんなスキルをもっているか」可視化することも大切です。
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社では、日本アイ・ビー・エムグループ全体での共通の仕組みとして持っているスキルをバッチで表現し、これは例えばLinkdInでも紹介することが可能です。IT技術だけでなく、リーダー層、社会貢献や人とのコラボレーション力のバッチなど、自分のスキルを社内外にオープンに発信すること推奨しています。

津田:スキルの可視化という観点で、DX推進はタレントマネジメントと親和性があると感じました。企業の人事が、ピープルアナリティクスをやろうと、タレントデータベースを蓄積していく中で、デジタル人材育成や組織の活性化の素地ができていくのかもしれないですね。

 

ミドルシニアも含めたデジタル人材が自走する組織を作るには~文化づくりのヒント~


井上:使うツールも環境も含めて、テクノロジーはすごいスピードで変わっています。「このスキルがあればいい」ということはなく、常にアップデートし続けていかなければいけません。
もちろん、企業は学ぶためのコンテンツや環境を整えていく必要があります。社員の皆さんは、与えられたものをただ実施するのではなく、自分たちで知識やノウハウ、スキルをどんどんアップデートし続け共有し、組織に還元していく。あるいは、社外にも還元していく……そして組織自体が新しいその知見をつけて、知の吸収と組織の成長でプラスの循環が起きてくるのです。各企業においても、一人ひとりがスキルを身につけ組織へ還元していった先に、組織として自走できる状態になることが理想ですね。
ところで、スキルという言葉が何を指しているのか、人によって軸がいろいろ違うことがあります。「自分にスキルがない」という人は、ぜひ人からフィードバックをもらってみてください。アンコンシャス・バイアスにより、人からのフィードバックで初めて自分の強みに気づけることがありますよ。

組織としてスキルをデータ化し、活用することも、もちろん大事なのですが、スキルや強みを可視化するには、人と人とのフィードバック文化を強めていくことが大切です。ポジティブな部分も、改善すべき部分も人に対してフィードバックをする、それよって自分のスキルに気づく、そのフィードバックをまた誰かに返す……。フィードバック文化の醸成は、組織と個人の自律にすごく役立つと思いますね。

津田:私は「シニアにこうあってほしい」とメッセージを出せている企業が少ないと思っています。経営陣からシニアに対して期待値や役割についてしっかりと伝え、企業文化を変革していく必要がありますよね。
チャールズ・A・オライリー著「両利きの経営」にも、「企業文化は変えられる」と書かれています。文化は「振る舞いの期待値」。メッセージを伝えることで、文化も変えることができると思うのです。 「キャリアオーナーシップをもってほしい」「新しい事業を興してほしい」というメッセージを企業から発信し、ミドルシニアが元気になっていくことを願っています。



まとめ


(ミドルシニアを含めた)デジタル人材が育ち、組織が自走していくために、ダイバーシティ&インクルージョンに根差した「スキルの可視化」「スキルに気づけるフィードバック文化の醸成」が必要という井上氏のお話は、DX推進を自社で実践しお客様とDX推進を共創しているからこそ、具体的かつ本質的な内容でした。また、津田氏のとくにミドルシニアに対して、小手先のデジタル化ではなく、組織の文化を変える、経営層・組織開発のアプローチが重要だという主張に、はっと気づかされる人事・経営に携わる人が多かったのではないでしょうか。
一口にデジタル人材やDX化と言っても解釈の違いや段階があり、「DX推進して何を成し遂げたいのか」を決め、組織文化へのアプローチが必要であるというのが、井上氏と津田氏の共通の見解でした。
参加者からは、
・今悩んでいるトピックだったのでおもしろかったです! 大変参考になりました
・井上社長のような若手企業人の話からは刺激が受けられて良い
・津田さんのミドルシニアへの理解に力強さを感じた
という声が上がり、各企業が抱える課題解決の大きなヒントになったようです。

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